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APBL
- NSGグループ
総合技術力の結晶

APBL -NSGグループ総合技術力の結晶

APBL開発の背景

自動車のフロントガラスは、事故などで破損したときドライバーや同乗者に与えるダメージを低減するため、割れても飛び散らないように合わせガラスが採用されている。
フロントガラスの製造には、型にガラスを載せてガラス自体の重さを利用して曲げる「自重工法」による製法と、プレスして曲げる「プレス工法」がある。プレス工法は自重曲げよりも深曲げができ、面精度の高い製品の製造が可能となる。
NSGとピルキントン社は、合わせガラスは2枚のガラスを別々にプレス成形し合わせる製法を採用していたが、その技術を更に向上させるべく、フラハグラス社(現ピルキントン・オートモーティブ・ドイツ社)では、ガラスをプレスする独自のAPBL(Advanced Press Bend for Lamination)と呼ばれる製法を1990年代に開発した。2005年に舞鶴事業所がピルキントン社よりAPBLを導入し、その後舞鶴事業所では自動車メーカーからの高まる要望に応えながら、より高い品質の製品を供給するために改良を重ね、同時にプロセスを改善し量産スピードをあげる工法を実現している。

自重工法
プレス工法

NSGグループの総合技術力の結晶

自動車のフロントガラスは、1990年代以降、自動車のデザインの多様化や燃費向上といった要求とともに、薄板で大型、かつ高い面精度であることが求められるようになってきた。米国リビーオーエンスフォード社(以下LOF社)(現ピルキントン・ノースアメリカ社)は、1980年代にフロントガラスをプレス成形する技術を開発し、1枚ずつプレス成形しそれを貼り合せてフロントガラスを製造する製法(CPBL:Conventional Press Bend for Lamination)を行っていた。LOF社は1986年にピルキントン傘下に加わったが、NSGはもともとLOF社とは技術交流が盛んだったのに加え、1988年にピルキントン社とも研究開発提携契約を締結したことから、1990年になって当社はピルキントン・ノースアメリカ社より京都工場(当時)にCPBLを導入した。
当社はCPBLによりトヨタ自動車の高級車などのフロントガラスを製造・供給していたが、1995年までに、より面精度を高くするための吸引成形法を導入した独自の製法(eCPBL)を開発した。この技術は、ピルキントン・オートモーティブ・ドイツ社のビッテン工場で、APBLとして完成された。
eCPBLでは、炉からガラスを出すときにロールで搬送し、その後プレスと吸引で成形するプロセスを採っている。しかしながら、ロールの影響で仕上がった製品にひずみが出ることがある。ひずみはドライバーの視野をゆがめる可能性があり、特に深曲げの入った大型のフロントガラスではひずみの影響を最小化する技術が求められる。基準以上のひずみの入ったガラスは検査ではじかれるため、歩留まりや納期にも影響を及ぼす。APBLでは、この根本的な問題を解決するため、ロールで搬送する代わりにエアで浮かせて搬送する方法を開発した。これは画期的な搬送法で、アイデアが生まれてから完成するまで試行錯誤が重ねられた。
このようにAPBLは、当社とLOF社、ピルキントン社の3社の技術交流による総合技術力により誕生した。

舞鶴事業所の導入時のチャレンジ

舞鶴工場2号機で初めて生産されたガラス
舞鶴工場2号機で初めて生産されたガラス

舞鶴事業所の導入時のチャレンジ

2000年代に入ると、フロントガラスはますます大型で面精度の高いものが求められるようになっていた。当社は舞鶴工場にAPBLを導入することを決定し、ピルキントン・オートモーティブ・ドイツ社のビッテン工場より大型のフロントガラスの製造ができる設備を導入、2005年にラインの建設が完了した。これにより、従来フロントガラスの最大サイズが1800㎜ x 1100㎜だったものが、2000㎜ x 1400㎜まで可能になった。また、切断から検査まで「直結」して行える製造ラインとし、効率が大幅に改善される予定だった。しかしながら、導入当初はこのプロセスが期待通りに稼働せず、6か月間「非常事態宣言」を行う事態となった。この間、クライアントの理解を得ながら、週末も作業を継続することで、ようやく問題を解決するに至った。

新たな需要・世界最大のHUD表示

フロントガラスに情報を写し出すヘッドアップディスプレイ(HUD)の導入が進められているが、ガラス形状がデザイン形状から乖離すると投射した映像と実際の道路にずれが生じる可能性がある。舞鶴事業所では、種々のシミュレーション技術を駆使しまた型面形状を含めプロセスの製造条件を詰めることにより、最大25インチ幅のHUDが可能なフロントガラスの製造に成功した。これは現時点で世界最大の表示サイズとなる。自動車の先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver-Assistance Systems)が進む中、高面精度の大きなフロントガラスの需要がますます高まっている。

HUD表示
HUD表示

世界展開

APBLを2005年に舞鶴事業所に導入した翌年、ピルキントングループはNSGグループの傘下に入った。もともとピルキントン・オートモーティブ・ドイツ社のビッテン工場でスタートしたAPBLは、舞鶴事業所で完成度を高め、市場の需要にこたえるかたちで2017年に同事業所内に2番目のラインを設置した。自動車の進化とともに高精度のフロントガラス需要は世界中で高まっており、NSGグループでは2013年にポーランド工場、2015年に北米バーセールズ工場に初めてAPBL導入を行った。さらに、2017年北米バーセールズ工場に2号機を設置し、イタリアのサンサルボ工場にも新設することで、主要市場への供給体制が整った。今後さらに面精度の高いフロントガラスの需要増が期待され、同技術でトップをゆくNSGグループのさらなる進化が求められている。