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セルフォック®
- 世界に先駆けて
開発したレンズ

セルフォック® - 世界に先駆けて開発したレンズ

セルフォック®とは

「セルフォック®」は、光の屈折率が中心部から周辺部にゆくにつれて放物線状に低くなる細い棒状または繊維状のガラスで、多くの種類の光ビームを、細い空間内で同時に位相を乱さずに伝送でき、かつ、短く切れば性能の良いレンズとなって優れた像伝送もできるという画期的な性能を持つガラス素材である。

セルフォック®

屈折率は、光軸(中心線)上がもっとも高く周辺ほど低い放物線状の分布となっている。このため、内部の光線はピッチ長Pを周期とする正弦波状に進み、長さP/2ごとに結像を繰り返す。

セルフォック®母材ガラスの製造方法
セルフォック®母材ガラスの製造方法

ロッド紡糸では、ガラスブロックから切り出した直径数十mmのロッドを加熱延伸する。溶融したガラスを直接紡糸する連続プロセスも用いられている。

イオン交換
イオン交換

高屈折率成分としてLi2Oを含むロッドをNaNO3溶融塩に浸漬させた場合のイオン交換を表している。

画期的な
セルフォック®ファイバーの発明

光は直進し最短距離を進むが、光を曲げて活用しようという研究は19世紀から行われていた。1960年代に入ってレーザー光が登場し、それを用いた光通信の研究が盛んに行われるようになった。光通信を行うには長距離伝送が必須となる。当時、すでに光学繊維が工業的に作られるようになっていたが、伝送距離は10mほどしかなかった。光学繊維内を光が進む間にロスが生じるためだ。こうした背景の下、当社では尼崎研究所で1965年に光通信伝送路としてガラス光ファイバーの研究を開始した。1967年には、通信技術でトップレベルにあった日本電気株式会社と共同研究を開始し、光をガラス繊維の中で減衰させずに進める方法の研究を行った。ガラス繊維の光の屈折率を中心部から周辺部へ放物線状に低下させられれば、通信容量を大きくできることは理論的に分かっていた。共同研究開発チームは検討を重ね、ガラス中のイオンと外部のイオンを交換することでガラスの中心部と外側の屈折率を変えるという画期的な方法を考案し1968年に発表を行った。セルフォック®ファイバーの発明は世界の大きな注目を集めた。

商業化までのチャレンジ

・セルフォック®ファイバー

光の伝送損失をいかにして抑えるか、ファイバー強度をいかにして高めるかなどの課題があり、激しい開発競争があった。当社では10年の月日を要しながらも、これらの課題へのソリューションを見出し、他社に先駆けてセルフォック®ファイバーの商業化に成功し、1978年、セルフォック®の製品名でついに発売を行った。同年、世界で最初の商用システムとして米国ディズニーワールドの電話回線に採用され、200kmの納入実績を果たした。これは画期的なニュースとして広くマスコミに取り上げられた。

・光通信用マイクロレンズとしての展開

セルフォック®は、光ファイバーとしての研究開発により生まれたが、当初より短焦点距離の微小レンズとして機能することが分かっていた。したがって、光ファイバーとしての開発と並行してマイクロレンズとしての開発も進められた。初期の光ファイバーは伝送信号が乱れやすいマルチモードファイバーで、長距離の通信に用いることができなかった。そのため長距離通信を行うには、光ファイバー間や、光ファイバーと光半導体素子の結合機や光分岐器を必要とした。セルフォック®マイクロレンズ(SML®)はこれらに最適であったため光通信に多く使用された。1980年代に入ると、ベル研究所が大西洋横断ケーブルの光源モジュールにSML®の採用を決めたため、当社は大量に納入を行うこととなった。

セルフォック®レンズ
セルフォック®レンズ

ガラスの内部で屈折率が変化している。そのため、両端が平面のロッド形状でも凸レンズの作用がある

セルフォック®マイクロレンズ(SML®) の応用

セルフォック®マイクロレンズ
  • (上)2本の光ファイバーを、フィルターを介して結合させた例
  • (下)LD(半導体レーザー)からの出射光を光ファイバーに送り込む場合

セルフォック®・レンズ・アレイ(SLA)の開発

SML®と並行して進められていたのが、SLAの開発である。セルフォック®の特徴の一つに、長さを適切に選ぶことで正立等倍像を得られることがある。この特徴を活かして、多数のSML®を1〜数列に配列し全体で1個の像を形成するSLAの開発が進められた。SLAは解像度に優れ、対象物に近接して均質な正立等倍像を得ることができる。当時の複写機は通常のレンズを使用しており、その特性上、原紙と像面の間に60㎝以上の距離が必要となり、複雑な光学系の仕組みが必要となっていた。当社は1978年に初の製品SLA6(開口角6度)を発売し、原紙と像面の距離を数㎝まで短縮することができたため、複写機に革新をもたらし、当時のリコー社およびミノルタカメラ社がSLAを採用した。

SLA
SLA

正立等倍の小さいレンズを横に並べると、
コンパクトな光学系で線状の結像が得られる。

SLAの展開

1980年に、当社は神奈川県に相模原製造所を設立し、1982年には開口角を9度にしたSLA9、さらに1984年に開口角を20度にしたSLA20を発売した。開口角が広がると焦点深度が浅くなり色収差も大きくなるが、明るい像を得ることができるSLA20は、当時急速に普及したファクシミリ用として広く使用された。さらに当社では、市場の急速な広がりと高度化を見せていた複写機用として、SLA12を開発し、高い解像度と極めて小さな色収差により、高い評価を得た。その後、SLAはどんどん小型化されていき、レンズの直径は初期には1㎜を少し上回っていたが、0.9㎜、0.6㎜、0.3㎜と細密化が進み用途が広がった。

SLAの急成長

アナログ複写機が次第に減少し、代わってイメージスキャナが普及してくると、そのレンズへの需要が高まった。SLAのレンズは0.3㎜まで細くすることに成功しており、物体と像面の距離を10㎜以下にしたSLA12Eは、密着イメージセンサ(CIS)として複雑な縮小光学系を使用したセンサに入れ替わって徐々にシェアを伸ばした。そしてインクジェットプリンタにイメージスキャナを組み合わせたマルチファンクションプリンタ(MFP)が登場し、MFPに採用されたSLA12Eは2003年以降、爆発的な需要を得た。同時に、原稿面を照明するライン光源のセルガイド(SG)の販売も開始され、NSGのレンズはMFPに欠かせないものとして市場を獲得した。
当社はSLAの需要拡大に対応するため、2004年に相模原事業所や蘇州板硝子電子で大幅な生産能力の増強を行った。その後もMFP向けSLAの需要は増え続け、さらなる増産化を図った。

鉛フリー化へのチャレンジ

屈折率を高め溶融や成形を容易にするために、ガラスには古くから鉛が用いられてきた。SLAのガラスにも、一部の機種を除いて数mol%の鉛が含まれていた。しかし鉛フリー化の流れが世界的に広まり、当社でも1999年ころからSLAのガラスから鉛を取り除く組成開発に取り組んでいた。鉛を除くことでガラスは失透しやすくなり、また鉛フリーではガラスの安定生産が困難になる。しかしながら当社では研究と試行を重ね、2009年についにSLA全品種の鉛フリー化を達成した。

更なる発展を目指し

2018年はNSG100周年であると同時に、1968年セルフォック®の発表から50年の節目の年でもある。セルフォック®は光通信と紙文化とともに成長してきたが、新たな市場を開拓して更なる成長を続けてゆく。